ブラック企業の問題は若者だけではなく、社会を揺るがし、すべての人に関わる問題


時代を読む~若手論客に聞く(4)
NPO法人代表・今野晴貴さん、日本型雇用を逆手に
 
カナロコ by 神奈川新聞 1月5日(日)13時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140105-00000016-kana-l14
 
 
正社員として採用した若者を
長時間労働や過酷な環境で使いつぶし、
退職のみならず心身の病に追い込むブラック企業
 
NPO法人代表の今野晴貴さん(30)はベストセラー
ブラック企業日本を食いつぶす妖怪」(文芸春秋)で
その存在と実態を顕在化させ、
政府の対策を後押しした。
 
ブラック企業の問題は若者だけではなく、
社会を揺るがし、すべての人に関わる問題だと説く。
 
 
 
 
■社会壊す本質

 
著書を通じ、違法で過酷な働き方を若者に強いるブラック企業
社会問題であると提起したことが、昨年の私の仕事の主だったことでした。
 
 
若者から労働相談を受けるNPO法人
「POSSE(ポッセ)」を立ち上げたのは大学在学中の2006年。
当時は正社員ではない非正規の仕事に就く若者が増えていて、
「勝手気まま」などと批判されるようになっていた。
 
 
私は労働法を勉強していたので、それは違うと思った。
 
 
会社側が「非正規で採用する」と言って
非正規で雇われているにすぎないのに、
なぜ若者が原因だとされるのか。
 
 
付き合いのあった労働組合の人もそうした実態への認識が薄く、
危機感を持ったのも大きかった。
 
 
12年の相談は約千件で、13年は2千件に迫るペースだった。
厳しい労働環境に置かれた正社員の問題が
目に見えて増えてきたのは09年以降で
ブラック企業」という言葉が使われるようになったのは10年。
 
 
それまで相談をかなり受けていたので、
これは正社員雇用の問題だ、とすぐにぴんときた。
 
 
ブラック企業というのは
若者が職場で追い詰められてうつ病になっているとか、
いじめられて辞めさせられているという話です。
 
働き続けることができない、
体を壊す、精神疾患にかかる。
最大の問題は、結果的に心身を破壊するということ、
人を使いつぶすことなのです。
 
 
その結果、得られるはずの税収が減り、
医療費や社会保障費を増大させ、
若者の未来を奪うことで少子化にもつながる。
そういう社会的損失、
人間の体や人生をないがしろにして成り立つ経済などあり得ない。
問題の本質はそこにある。
 
 
 
■労使関係変質

ブラック企業を生んだ一番の要因は、
労使関係が変わったことです。
 
日本の労働はもともと厳しいが、
それでも基本的には日本型雇用の枠内に収まっていた。
日本型雇用は労使関係が重視され、労組との交渉でつくられてきた。
 
 
それに対し、ブラック企業は新興企業に多くて、
労組もなければ従業員との話し合いも一切ない。
すべて会社が決めた通り、
会社が自由に決められるという
世界的に見てもまれな雇用形態だと思う。
 
 
労務管理のやり方を変えた、
あるいは今までと違うやり方の企業が増えてきたということ。
 
普通なら労組が入るところを全部勝手に決められる。
その中で使いつぶせば利益が出るぞ、という認識が広がった。
何やってもいいんだ、こいつら何やっても黙ってるよ、と。
 
労組がどんどんなくなって、
何をやってもいいという状態になったときに、
ブラック企業が出てきたということだと思います。
 
 
産業構造が転換する中で、新興企業が増えている。
その新興企業が新卒を採用する。
そうすると必然的に、新卒のところばかりが労使関係不在の、
新しい形の労務管理をやっているブラック企業になってくる。
 
 
何も問題が起きないんだから、
入れてすぐに辞めさせればいいという機運が高まっている
代わりはいくらでもいるし、
日本自体がつぶれてきたら外に出て行けばいいとも思っている。
 
 
 
日本の場合、特殊なのは、どんな条件でも我慢しなさい、
ということがまかり通ってきたことです。
 
 
日本型雇用というのは、頑張って我慢すれば報われる世界。
そうしたいつか報われるという信用を逆手に取る、
裏切る企業はあるということを前提に、
社会は行動しなければいけなくなっている。
 
 
そこをまだ社会全体が認識できていない。
 
 
例えば教育現場では、何かあれば専門家に相談しに行くとか、
勤務記録をつけておいて、
後で裁判になったときに対応できるようにするとか、
そういう労働法をぜひ教えてほしい。
 
 
認識が変わることで、
本人が自分を追い込んでしまう、
自分が悪いんだと思い込んでしまうことから
脱却していく可能性が広がります。
 
 
 
 
■再生の一歩に

昨年大きかったのは政治が動いたことです。
実際に与党、厚生労働相
ブラック企業の対策をしなければいけないと言明し、
厚生労働省が対策に乗り出した。
 
きっちり企業に責任を取ってもらわないと、
若い人たちに未来がなくなる、
国の未来がなくなるとまで言っている。
 
これは画期的な思考の転換だと思います。
政府が言うことで、認識がかなり変わった。
 
 
悪い企業もあるということをしっかりアナウンスしたことで、
当事者は立ち上がりやすくなる。
企業の側が悪いんだと、少なくとも行政が言っているわけですから。
 
 
そこで取り締まれなくても、
裁判で権利を回復しようかとか、
労組に入って対等な立場で条件を見直そうかとか、
そういう話につながる後押しになります。
 
 
最近、福祉関係者や教育者、弁護士らと
ブラック企業対策プロジェクト」を立ち上げました。
ブラック企業の見分け方を説明する冊子の無料ダウンロードなど、
いろいろな取り組みをやっています。
 
 
相談を受けている人と、さまざまな現場の人が
事実を共有して対策を一緒に考え、それを広げていくと。
そういうことで包囲網を作っていくイメージ。
 
 
解決していくためには、認識が広がるだけでは駄目で、
当人が被害を回復することを社会が支えなければいけないんです。
 
 
 
今までみんな対岸の火事だと思っていたはずです。
そうではなく、一人一人がこの問題に向き合わないと
日本の再生はできないんだと
意識を変えていかなければ本当の解決はできない。
それには時間がかかります。
 
 
ブラック企業対策は、ここを起点に
もっと日本が働きやすい、
豊かな社会になることを目指すという取り組みでもあると思います。
 
マイナスからゼロにすると考えなくていい。
もっとずっとマイナスだったんだ、と。
 
 
これから全部いい方向に一歩ずつ進んでいこうと考える方が、
私はいいと思います。
 
 
 
 
過酷な労働を強い、若者を精神疾患にしたり、
退職に追い込んだりする企業。
 
 
新入社員を大量採用した上で選別し、
パワハラを繰り返して多数を辞めさせることや、
低賃金で長時間労働をさせ、
追い詰められた若者を使い捨てるのが特徴的なやり方。
 
 
就職難で採用市場が
企業側の買い手市場となっていることが背景にある。
 
 
2000年代に入り、
IT企業で働く若者が自らの劣悪な労働条件を訴えるために
インターネット上でこの名称を使い始めたとされる。
 
 
いまではITだけでなく
小売り、外食、介護、保育など幅広い業種で
同様の企業が増えている。
 
 
 
 
◇こんの・はるき1983年、仙台市生まれ。
NPO法人POSSE代表、「ブラック企業対策プロジェクト」
http://bktp.org/)共同代表。
一橋大学大学院社会学研究科博士課程在籍。
著書に「ブラック企業日本を食いつぶす妖怪」(文芸春秋)など。
 
 
 
 
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ブラック企業対策プロジェクト
 
 
 
急激に口にされるようになった『ブラック企業』とは、
利益のために新卒を使い潰す成長大企業です。
 
若年層の鬱病・過労死・過労自殺は、
これらの企業による「組織的な新卒の使い潰し」という
新たな社会問題であることが明らかになっています。
 
激しい選別に伴う集団的なハラスメントや
残業代未払いの長時間労働に多くの若者が苦しめられ、
将来を奪われているのです。
 
 
ブラック企業の違法行為は、個人の被害にとどまるだけでなく、
日本社会と経済全体に悪影響を及ぼします。
若者の将来が奪われることで生産性が低下し、
合法な他社の利益が不正な競争で圧迫されることによって、
日本経済はますます苦しくなるでしょう。
 
長時間過酷労働や鬱病の罹患により、
少子化も更に進展してしまう恐れがあります。
 
ブラック企業の蔓延は、
日本社会全体の縮小へとつながっていくのです。
 
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ブラック企業」という言葉の由来
 
 
今日的な意味での「ブラック企業」は、
2000年代中ごろに、IT労働者たちによって作り出された言葉です。
 
2008年には「ブラック企業に勤めてるんだが、
もう俺は限界かもしれない」と題する小説が発表され、
2009年には同小説が映画化されました。
 
IT業界は劣悪な労働条件で有名であり、
「35歳定年」ともいわれてきました。
 
長時間・低賃金労働を繰り返さざるを得ないため、
心身の限界から、35歳までには
働き続けることができなくなるというのです。
 
 
このような劣悪な雇用は、今日、IT業界だけではなく、
小売、外食、介護、保育など、新興産業全般に広がっています。
 
これら新興産業の多くの企業では、
従来型の日本的雇用慣行が成立しておらず、
「正社員」として若者を採用しても、
長期的な雇用や技能育成が行われません。
 
35歳どころか、数年、あるいは数か月で心身を摩耗し尽くし、
鬱病と離職に追い込まれることも珍しくはありません。
「使い潰す」ことで利益をあげる、
「新しい労務管理」が若年正社員の世界に姿を現しているのです。
 
 
しかし、これらは成長産業であるために、
若年雇用の最大の「受け皿」となっています。
個別企業を見ると、若者を大量に採用し、
急激な勢いで成長する一方で、
過重な労働を強いて「使い潰す」企業が多々見られます。
 
 
こうした新興産業の、急成長する大企業で、
かつ若者を次々に使い潰す企業が「ブラック企業」として
告発されるに至ったのです。
 
 
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ブラック企業とは、狭義には
「新興産業において、若者を大量に採用し、
過重労働・違法労働によって使い潰し、
次々と離職に追い込む成長大企業」であると定義します。
 
この手口は様々ですが、
たとえば、次のようなケースが狭義のブラック企業に当てはまります。

 
• 派遣・契約社員として働いているが、いつになっても正社員になれない
 
• どんなに働いても、「営業手当」として3万円しか残業代が支払われない
 
• 学校求人で応募したので安心していたが、きつ過ぎて働き続けられない
 
• 初めての介護の仕事なのに、仕事を教えてもらえない
 
• 求人の内容と実態が違う
 
• せっかく正社員で就職したのにやめさせられそう
 
• 仕事がきつすぎて辞めたいのに、やめさせてもらえない
 
• 上司から「24時間365日死ぬまで働け」といわれる
 
• 「結婚したらクビだ」と言われる
 
• 社内にうつ病の人が多くて、自分もいつそうなるかと不安だ。
 
• 子会社に出向させられて、毎日自分の転職先を探す業務を
  させられている

• インターンと言われて、いつまでも無給・最賃以下で働かされている
 
 
 
一方で、日本社会にはブラック企業問題の登場以前から
違法労働が蔓延してきました。
 
サービス残業や、過労死といった問題は、
以前から日本社会を覆っていました。
 
もちろん、若者を採用後数年で使い潰すという現象は、
明らかに近年の新しい事態ではあります。
 
数か月から数年で使い潰すという労務管理の広がりが、
若者をして「ブラック企業」との告発をせしめました。
 
しかし、同時に、「ブラック企業」に対する若者たちの告発は、
日本社会全体に広がる違法労働をも射程にとらえています。
 
言い換えると、ブラック企業問題を通じて、
日本社会全体の労働環境が問われているのです。
 
 
したがって、「ブラック企業」を広義にとらえると、
「違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業」であると
定義できます。
 
 
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「社会問題」としてのブラック企業
 
 
ブラック企業の被害は、社会全体に及びます。
 
鬱病が蔓延し、若者の将来が奪われることで
日本全体の技能育成が困難となり、
労使の信頼関係が奪われることで生産性も引き下がります。
長時間過酷労働や、鬱病の罹患により、
少子化も進展してしまうでしょう。
 
 
ブラック企業の蔓延は、
日本社会全体の縮小へとつながっていくのです。
 
 
また、ブラック企業は、
優良な雇用を作ろうと法律に則って努力する同業他社の利益を
不正な競争で圧迫し、産業の在り方をゆがめます。
 
日本の健全な産業社会を守り、
良質な雇用を増やすためにも、
ブラック企業の違法行為が是正されなければなりません。
 
 
さらに、ブラック企業の蔓延によって
若者が鬱病に罹患し
働き続けることができなくなる事例が増えています。
 
その結果、アルバイトなど不安定就業に
従事せざるを得なくなるケースや、
症状が悪化することで、
若くして生活保護の受給に至るケースも見られます。
 
 
もちろん、労働市場ブラック企業ばかりが蔓延すれば、
生活保護から就労へと移行することも、ますます困難となります。
 
先の国会で「生活困窮者自立支援法」が審議されましたが、
ブラック企業の対策なしに、貧困問題の解決は不可能です。
 
 
このように、ブラック企業は個別の被害にとどまらず、
日本社会全体の問題です。
しかし、それにもかかわらず、
個別の事例が体系的に「新しい問題」として
提起されることはこれまでありませんでした。










RT ミヒャエル・エンデ ‏@Michael_Ende_jp 
生まれてきたのは、ある「誰か」です。
勿論、この人間は、すぐには自分の身体を
上手く動かすことはできません。
学ぶべきこともたくさんあります。
社会にも慣れ親しんでいかなければならないでしょう。

しかし生まれてくる子どもが
一人の完全な人格であることには変わりはありません。
 『文明砂漠』





RT ミヒャエル・エンデ ‏@Michael_Ende_jp 
現代の子供に関する考え方には
大きな間違いがあると思います。

それは生まれ落ちた子供は、
いわば空っぽの袋であって、
そこに何か詰める作業が早ければ早いほど、
のちの中身は増えるというものです。
 『エンデの文明砂漠』






RT ミヒャエル・エンデ ‏@Michael_Ende_jp 
その試験地獄では、子供はひっきりなしに
自分の有能さを証明せねばならず、
ひたすら詰め込まなければならないのです。
このことは将来悲惨な結果を呼ぶことになると思います。

このままではノイローゼ患者世代を育て、
彼らは、他の世代の人間以上の知識も教養も
身につけられないのではないでしょうか。







RT Krishnamurti @krishnamurtibot  
どんな公式にもいかなる導師にも従うことなく、
自分自身を理解することが肝要なのである。

このたゆみない、選択をはさまぬ自覚によって、
あらゆる虚妄と偽善に終止符が打たれるのである。





RT 自然農bot @shizen_no 
情報的にスリムになると、自分が見えてくるというか、
もとにある自分が剥き出しになってくる。

反対に情報で身の回りを固めてると、
情報が自分を支えてくれる代わりに、
生じゃなくなってくるというか、
自分が何だか干からびてくるんですね。








ドナルド・キーンの東京下町日記 憲法9条 行く末憂う

東京新聞 2014年1月5日


歌手の沢田研二が私のためにバラード曲を作詞してくれた。
突然、届いたCDに収められた『Uncle Donald』(ドナルドおじさん)。

音楽好きの私だが歌謡曲には疎く、
恥ずかしながら沢田を見たこともなければ、名前も知らなかった。
「誰もが知ってる大スター」と聞いて驚いた次第だ。
思わぬプレゼントに感謝しながら曲に耳を傾けた。

Don’t cry Donald 僕たちに失望しても
Uncle Donald この国をあなたは愛し選んだ
忘れてならない 何年たっても「静かな民」は希望の灯



私の日本への愛、日本人への尊敬の念は何一つ変わっていない。
ただ、確かに失望していることはある。

・・・

それでも死の淵(ふち)を見た。
ましてや、物量で圧倒された日本兵や爆撃を受けた市民の
恐怖たるや想像を絶する。

戦争は狂気だ。
終戦に日本人のほとんどは胸をなで下ろし
「戦争はこりごり」と思っていた。
私ははっきりと覚えている。
日本人は憲法九条を大歓迎して受け入れた。

知り合いで憲法起草に関わったベアテ・シロタ・ゴードンも
こう証言していた。
「人権部門担当の私は、男女平等の概念を盛り込もうとして
抵抗を受けた。でも九条については異論を聞かなかった」

戦争には開戦理由があっても、
終わって十年もすれば何のためだったか分からなくなることが多い。

最近もイラク戦争大義名分だった大量破壊兵器は見つからず、
うやむやになった。

そもそも国家による暴力の軍事行動は国際問題を複雑化し、
解決をより難しくする。


昨年は、言論の自由を制限する特定秘密保護法が成立した。
尖閣諸島竹島をめぐり近隣諸国との関係が緊張した。
年末には安倍晋三首相の靖国神社参拝に
米国からも異例の「失望」が表明された。

今年は一転して、私が沢田に「心配ご無用」と一句返せる
一年にしたい。 
(日本文学研究者)