人体と自然は、同じ生命体として、血脈、地脈、水脈があるんだろうな~。

自然を再生する「水脈」を学ぶ!

SOLAR JOUANAL 2014.11.12up
 
 
風・水・光に人の視点を加えて大地の血管を再生!!
神奈川県藤野町で「水脈」を学ぶ

小水力の利活用が注目を集めている。
しかしその水がダメになってしまったら元も子もない。
水がダメなら発電どころか森も川も海さえもダメになってしまう。
 
もちろん巡り巡って僕らの生活さえもダメになってしまうほどのものだ。
たかが水、されど水。
 
今回は「水脈」を学んでみました。

 
水脈の流れの改善で、自然の再生を
可愛い子に弱いのは今始まったことじゃないから仕方がないのだけれども、
それも悪いことばかりじゃない。
誘われるままにふらっとついていけば時にはよいことだってあるのだ。
 
そんなこんなで今回出掛けたのは神奈川県藤野町
神奈川県緑区のはずれ、相模湖をど真ん中に広がる自然いっぱいの地域だ。
 
 
藤野は小学校跡を活用した藤野電力の太陽光発電など
自然エネルギーに関する動きも活発な場所。
 
湖ではワカサギなんかも釣れるし、渓流に入ればハヤはもちろん、ヤマメもアユもいる。
何より温泉まである。
まだお世話になっていないけれども病院だってある。
 
僕が東京の生活に疲れ、原稿の締め切りに追われると雲隠れに逃げ込む憩いの場所でもあるのだ。
 
そんな藤野に「おいでになりませんか」なんて誘われたら行くしかないでしょ。
 
 
あまり天気は良くないけれども、中央線に乗って心は晴れ渡って電車の中を走ってでも早く着こうとした藤野駅
高揚しているは女の子に会うためでなく水脈を学べるドキドキに間違いない。
 
そう、今回訪れた目的は「水脈整備講座」。
相模原市立環境情報センター主催で藤野トランディションが後援する講座で、
今回の講師は矢野智徳さんだ。
 
 
紅葉に囲まれた藤野名物「山のラブレター」を眺めながらたどり着いた藤野中央公民館。
まずは座学、午後からフィールドワークの予定だ。
 
入口に矢野さんらしき人もいたけれども挨拶もそこそこに席を確保。
会場は30名程だろうか、一番後ろの空いていた席に何とか座るとすぐに講義がはじまった。
柔らかな口調でスタートした講義は目からウロコの懐かしくも新しい内容。
 
 
「<風><水><光>の動線を軸に
<人>の動線を加えて自然環境を読むことが大切。
 
大地の血管である水脈と空気に着目して、
全国各地で環境整備・自然治療をずっとやってきました」という矢野さん。
 
 
「水脈の滞りをなくしてやると下流部だけでなく上流部までどんどん再生されていく」という、
これまで実践してきた経験とデータをもとにした解説はしっくりくるものばかり。
 
水の流れが悪くなるとそこから土壌が悪くなり、
植物にとって悪いガスなどが発生、周辺の自然環境を悪化させていくのだという。
 
そこでほんの少し人の手で水の流れを改善するだけで、
後は自然の治癒力で豊かな植生を取り戻していくらしい。
 
 
詰まった水路を掃除しただけで、
枯れる寸前の神社の神木が元気を取り戻したりする写真を見せられると
ダイエットのビフォーアフターを見るくらい、目を疑うほどの違いがある。
 
 
「植木鉢の底を閉じてしまうと植物は育たなくなります。
腐ってしまう。
水をやらないと枯れてしまう。
ゆっくりと水が通るからこそ植木鉢の中でしっかりと植物が育っていく」と矢野さん。
 
そんな水の動きがうまくいっていないからさまざまな問題が全国で発生しているのだという。
 
そして逆に言えば、小さなことを積み重ねていけば
大きな問題も必ず解決する方向へと進んでいけるというのだ。
 
 
 
そしてそんな小さな積み重ねの一つを実践しにいざ、森の中へ。
車を避け旧甲州街道を20分ほど歩きたどり着いたのは民家のすぐ脇、中央道の真下だ。
橋脚のコンクリートが原因で水脈が切れてしまっていたらしい。
そこで水の流れをよくしてやることで溜まっていた汚泥がなくなり、
少しずつ上流部まで緑が再生していっているとのこと。
 
 
みんなでスコップなどを手に、その小さな沢に入り水が流れやすいように調整。
「流れすぎも良くない」と掘った場所に竹や枝を戻したり、沢蟹と戯れてみたり。
まるで水遊びの延長だ。
 
解説をしながらも、風が通るように鎌を振って枝を切り、
水に流れのように土や流木をどかしたり並べたりしていく矢野さんはとにかく楽しそうで、
その姿は自然と戯れる子供のようだ。
 
でも、理にかなってる。
僕らが自分たちの利便性を追及するために壊してしまった自然が、
この場合は水の流れを光や風や水の気持ちになって
少しだけ手を加えてやると元気を取り戻す。
そして僕らも元気を取り戻していくような気がする。
 
 
矢野さんは「見える部分だけを気にすることが多いけれども、
地面の中も全部含めて考えていかなければならない」という。
 
 
「自然はすごい。まだまだ間に合う」という20年以上の経験からくる矢野さんの力強い言葉もあるし、違った例でもどぶ川を子供たちが水遊びするきれいな清流に戻した静岡県三島市の例もある。
 
スコップ一個で大地の呼吸まで感じられるなら、
スコップ一個で環境がかえられるなら、やるしかないでしょ。
 
僕らができることはまだまだたくさんある。
 
 
女の子とはあんまり話はできなかったけど、矢野さんと話し、自然と語り合えた良い一日、
水の流れにちょっぴり貢献、かいた汗は温泉で流して、ビールはのど元に流し込んで、流れるように帰路につくことにした。
 
 
 
■グリーンパワープロジェクト
http://www.greenpowerproject.jp/
松浦良樹
1970生まれ。台湾生まれの父と満州(中国北部)生まれの母の間に生まれた鹿児島育ち。
現在田舎暮しの物件を物色中。
環境・エネルギー・農業・伝統文化などをメインに「エロからエコ、エコからエゴまで」を標榜。
釣りと麻蚊帳LOVE。
六本木の秘密基地を拠点にしながら新宿歌舞伎町、特にゴールデン街をこよなく愛する、ヘビースモーカーの環境ライター。