日本が貧困社会だっていう、明確な証拠だわな~ 『老人ホーム化する刑務所、「出るのが怖かった」-高齢化で医療費増も』



日本が貧困社会だっていう、明確な証拠だわな~


老人ホーム化する刑務所、「出るのが怖かった」-高齢化で医療費増も

 Bloomberg 2015/4/16 http://a.msn.com/01/ja-jp/AAb40FA


ブルームバーグ):世界中の多くの刑務所は脱走防止に時間と労 力を割いているが、日本では受刑者を出所させるのに苦労している。毎 年約6400人があてどもないまま出所、そのうち3人に1人は2年以内に 戻ってくる。

  日本政府は犯罪対策閣僚会議で昨年12月、帰る場所がないまま社会 復帰する出所者数について、夏季東京五輪が開催される2020年までに3 割以上減らすと公約した。犯罪や非行に手を染めた人を社会の一員とし て再び受け入れる社会環境を構築する一環だ。

  高齢受刑者がこの10年間急増する中、かなり高い数値目標だ。自由 を手にしても孤立する社会での生活より、仲間がいて衣食住を政府が提 供する刑務所生活を選ぶ受刑者も多い。

  長崎刑務所に入所している67歳の受刑者は、すりを繰り返して14回 目の服役中だ。12月に満期出所予定だが、支援なしにはまた戻る可能性 が高いと社会福祉士はみている。頼れる親族や友人がおらず、なけなし の所持金を食費や酒で使い切ってしまうからだ。福島刑務支所(女子刑 務所)では60歳以上が全受刑者の28パーセントを占める。窃盗を重ねて いる最高齢91歳女性は、入出所を繰り返している。

居場所


  「日本の刑務所は劣悪な環境、ほとんどの施設で暖冷房が入らない ので、冬は手足がしもやけでパンパンになり、夏は汗だく。どうしてこ んな環境に戻りたいのか、それだけ社会に居場所がないということだ。 刑務所には仲間がいて、食事と部屋が与えられ、健康管理も受ける、死 亡しても手厚く弔ってもらえる」と龍谷大学大学院法務研究科教授で犯 罪学専門の浜井浩一氏は述べる。      取材過程でブルームバーグは日本の3つの矯正施設への立ち入りを 許可され、約10人の受刑者の話を聞いた。他にも検事、刑務官、ロビイ スト、社会福祉士、官僚や研究者にも取材をして記事をまとめた。個人 情報保護の観点から受刑者の名前は伏せた。

  人口10万人当たりの受刑者数を国際比較すると日本は49。米国 の698、英国149、ドイツ76に比べると少ない。しかし、最近では高齢者 犯罪が増加し、刑務所によっては内部が福祉施設化している。

循環


  高齢犯罪者は矯正施設の出入りを繰り返している。家族がいなかっ たり、金銭的支援がなかったり、障害があったりして地域社会から見放 されているからだ。累犯防止に対応するため、日本政府は、帰る場所の ない高齢出所者を支援するプロジェクトを進めている。

  法務省によると、65歳以上の犯罪検挙は2013年度に4万6243件、20 年前と比べると4倍以上に上る。高齢者犯罪の74%は窃盗で、刑務所人 口のほぼ5人に1人が60歳以上だ。

  「刑務所によっては老人ホームのようなところもある。受刑者が食 事を作って食べさせてあげたり、歩けない人を支えてあげたりする。雑 居房では体が痛くてうなされていたり、認知症で夜中に徘徊(はいか い)したりする人もいる。ひどいと排せつ物を投げたり、わざと布団に 粗相をしたりする受刑者もいて、刑務官の負担が増加している」と、全 国の刑事施設を半世紀以上にわたり慰問を続け、大スターながら法務省 特別矯正監も務め、矯正施設の環境改善に尽力する杉良太郎氏は述べ た。

コスト


  高齢受刑者に対して刑務所に代わる意味のある対応策を見つけるこ とは、日本にとって喫緊の課題でもある。国内総生産の240%以上の債 務を抱え、先進国の中において最大の債務超過国だからだ。

  刑務所など矯正機能を充実させる14年度の予算額は約2300億円。法 務省によると受刑者1人当たりの年間コストは約320万円、生活保護を 受けた場合のほぼ倍に相当する。安価な商品の万引きなどのささいな犯 罪でも再犯を繰り返せば最長で5年の実刑判決を受ける可能性もあるの で、その場合、単純計算で5年間で1600万円かかる。

  「こんな公費の使い方をしても誰も幸せにならない。効率的な財政 運営をするのであれば別の方法を考えるべきだ」と障害者施設を運営す る社会福祉法人南高愛隣会顧問・理事で最高検察庁参与の田島良昭氏は 言う。田島氏は厚生労働科学研究「罪を犯した障害者の地域支援に関す る研究」の代表を務めた。

医療費


  受刑者の医療費も年々伸びている。法務省によると、14年度の薬剤 費および医療機材費は過去9年で倍増し、年間60億円だった。受刑者の 病院搬送も9年で倍増し、12年に1278件に上った。

  厚生労働科学研究「罪を犯した障害者の地域支援に関する研究」 は、03年に元衆議院議員山本譲司氏が自身の刑務所での経験を基にし た著書「獄窓記」(ポプラ社)で刑事施設に在所する障害受刑者の実情 を紹介したことを契機に始まった。研究報告後、政府は09年から47都道 府県に地域定着支援センターの設置を進め、社会復帰支援を行ってい る。

  累犯者問題は06年1月、西日本旅客鉄道下関駅が放火されて74歳 の男性が逮捕されたとき、社会的にも注目された。容疑者は、事件の8 日前に刑務所から出所し、空腹と寒さに耐えられず、刑務所に戻りたく て放火したと供述した。知的障害を持ち、事件それ以前も放火、放火未 遂を繰り返し、10回服役した経験があり、人生の40年以上を刑務所の中 で過ごしていた。

病気


  法務省矯正局総務課長の大橋哲氏は、「彼らはどこのセーフティー ネットにも引っかからず、刑務所に落ちてきてしまった人たちだ。本 来、福祉を受けていれば正常な生活をしていた人たちで、福祉へつなぐ ことでそこに戻していこうとしている」と述べた。

  法務省によると、12年度の時点で、受刑者の3分の2は何らかの病 気に罹患(りかん)していた。循環器疾患が一番多く、続いて精神およ び行動障害だった。

  受刑者の高齢化に対応するため、刑務官は介護士のような役割も果 たしている。福島刑務支所長の赤間ひろみ氏によると、高齢で障害を持 つ受刑者の排せつ物清掃や、歩行補助を娘や孫の年齢の刑務官が担当し ている。

  隣接する福島刑務所(男性刑務所)は1月、4人の受刑者を病院搬 送した。その警備に刑務官24人を割かなければならなかったため、現場 に残った刑務官への負担が増えたと所長の太田実氏は述べた。

最後にする


  日本の刑務所は欧米の矯正施設よりも安全かもしれないが、自由が 剥奪される。受刑者は午前6時45分起床、午後9時に就寝し、房には冷 暖房がないところがほとんどだ。禁錮刑ではなく懲役刑を科すので就労 義務があり、日中10-20人に分かれて職業訓練をしたり、民芸品を作っ たりする。さらに農作業をしたり、受刑者の食事を作ったりするほか、 受刑仲間の介護もする。規律を守るために食事中、入浴中の私語は禁止 されていて、トイレに行くにも許可がいる。

  すりを犯し長崎刑務所で14回目の服役をしている67歳の高齢受刑者 は、薄緑色の作業服に身を包んでいる。社会福祉士に服役前の住所や、 紙に書いてある漢字、頭の中で簡単な計算をするよう尋ねられても、首 をかしげて答えに詰まる。身長150㎝ほどの中肉中背の男性は、糖尿 病、高血圧を持ち、両耳難聴で、知的障害者であるため、日々の家計の やりくりを管理できず、窃盗に走った。

  時折バーテンダーや小さな漁船に乗って働いたが、所持金がなくな ると盗みを働き、洋服、惣菜やスナック代に充てたと語った。スーパー マーケットで客の買い物かごの中に見えた財布をつかんだのが直近の受 刑理由だ。「刑務所に戻るかもしれないという頭はあった。でもお金が 足りないから。買い物かごの中に財布が見えた。最後にします」と男性 は述べた。

再出発


  社会福祉士が過去に支援したある1人の元受刑者は社会での再出発 に成功し、政府が進めるプログラム(09年からの地域定着支援センター 設置と社会復帰支援活動)が一定の成功を収めていることを示唆してい る。その78歳男性は、空腹を満たすために無銭飲食、すりや万引きを繰 り返し、15回服役した経験を持つ。

  子供のころ、一緒に暮らした何人もの継母と折りが合わず、満足な 食事が与えられなかったこともあり、成人に達してから家を出た。肉店 などで働いたが、知的障害があり、人付き合いが苦手なため、長続きし なかった。ホームレスになり、日中は空き家などで過ごし、夜中に出歩 き、空腹を満たすために窃盗を繰り返した。

  社会福祉士の支援で5年前に長崎県諫早市養護老人ホーム聖フラ ンシスコ園に入所した。1日のほとんど園内の農園で野菜を育てること に費やし、テレビで喜劇を見ることが楽しみだ。入所以来、犯罪は一度 も起こしていない。

  「今が生きていた中で一番幸せだ」と男性は養護老人ホームの4畳 ほどの自室で日に焼けた顔をしわくちゃにして恥ずかしそうに笑った。 「食事はおいしいし、誕生日を祝ってもらえるし、毎日風呂に入れる。 刑務所から出るときに世話をしてくれた人たちを絶対裏切りたくな い」。

「出るのが怖い」


  高齢受刑者の多くは、孤児院で育ち、身体的、性的暴力を受けてい たり、障害があるにもかかわらず家族の支援が受けられなかったりな ど、難しい過去を背負っていると長崎県地域定着支援センター所長の伊 豆丸剛史氏は言う。伊豆丸氏が以前に支援した元受刑者は「刑務所から 出るのが怖かった」と彼につぶやいた。刑務所での生活は望んでいなか ったが、外での生活はもっと嫌だったからだという。

  「その言葉に、罪を犯さざるを得なかった当人と、社会的問題の根 幹が濃縮されている気がした。服役を繰り返し、高齢化していくと社会 復帰できる要素がだんだん削られていく。ある程度資源が残っている早 いうちに介入する必要性を感じている」と伊豆丸氏は述べた。

  社会福祉士の伊豆丸氏は、こういった受刑者を訪問・面接し、出所 後の居住地を探す手伝いをしている。また出所を控える複数の受刑者に 対して講義をしたりもする。全国の地域定着支援センターは過去5年間 で1000人以上の受刑者を支援した。

再犯


  刑務所や検察庁でも社会福祉士を採用し、出所予定者を地域定着支 援センターに紹介したり、検事が事件の相談をしたりしている。満期高 齢受刑者の再犯率は下がりつつあると法務省矯正局総務課長の大橋氏は 述べた。

  再犯により刑務所に収容される受刑者の約70パーセントが無職だ。 政府は20年までに、犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用する 企業の数を現在の3倍の1500社まで増やす目標も同時に掲げた。

  問題解決に向かう努力は始まったが道のりはまだ長いと、龍谷大学 の浜井教授は言う。地域定着支援センターも数少ない要員で作業をして いるし、犯罪者に対する社会の偏見もまだまだ強いからだと浜井氏。

出直し


  元受刑者を受け入れる老人ホームを探すのも至難の業だ。日本では すでに特別養護老人ホームに入所できていない高齢者が52万人もいる。 また、今後高齢者の独り暮らしは増加をたどる一方で、地域社会や家族 の絆が薄れる中、支援を必要とする高齢者も増えるだろう。

  しかし、現在進行中のプログラムが受刑者に一筋の光明を与えてい ることも確かだ。社会福祉士の伊豆丸氏が3月に佐世保刑務所で講義を した際、参加した受刑者は出所後の人生に安堵と希望を見いだしてい た。

  参加者の1人は、窃盗などで過去10回服役経験があった高齢受刑者 だった。元建設作業員で、60代後半に差しかかり、仕事が見つからな い。両親や兄弟を亡くし、帰る場所もないので、犯罪を繰り返した。

  「こうした支援をしてくれるところがあるなんて知らなかったの で、うれしかった、出所してからの生活に希望が持てる。年が年なので 出直すなんて言える年齢ではないが、真面目に出直したいと心に決め た」と男性は述べた。

記事についての記者への問い合わせ先: 東京 Kanoko Matsuyama kmatsuyama2@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: 大久保義人 yokubo1@bloomberg.net; Anjali Cordeiro acordeiro2@bloomberg.net; Brian Bremner bbremner@bloomberg.net 上野英治郎




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学校を卒業してすぐの若者の4割が『非正規雇用で初就職』・・・
こんな社会が持つわけないじゃん。

うちの子はなんとか、競争に勝たせて、
正規雇用で・・・!
出来れば公務員で・・・!

・・・なんて考えて
4割の子を蹴落として、わが子を勝たせたとしても
こんな社会が持つわけないから、、、

こんな社会は、社会自体が負けですよ。

社会自体を貧困にして、誰が勝つんだろう。
多くの人を貧困にして、勝ってどうするんだろう。

マスコミが言うような
勝ち組、負け組、という言葉に
騙されてはいけない。

東京新聞:新卒雇用(No.470) 4割が非正規で初就職 正規への転職困難

:東京新聞(TOKYO Web) 2013年10月9日
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2013/CK2013100902000184.html


初就職時の非正規雇用の増加など、若者を取り巻く雇用環境は厳しい状況が続いています。

初めて就いた仕事が非正規職員としての雇用だと、
特に男性は正規雇用に比べて継続する比率が低く、
不安定な雇用から抜け出しにくくなる悪循環に陥る可能性があります。


●女性の半数が非正規

 
総務省の就業構造基本調査によると、初めて就職した際に非正規雇用だった人の割合は
1987年10月~1992年9月の13・4%から右肩上がりに増加しています。
 
2007年10月~2012年9月は39・8%でした。

男女別では、男性の約3割、女性の約半数が非正規労働者としての採用でした。
20年前に比べると、男性は3.6倍、女性は2.6倍に増加しました。
 
背景には、景気低迷で企業が正社員の採用を絞った影響が考えられます。

企業の売上高に占める人件費の割合を見ると、例えば製造業では
90年代は17%を上回っていましたが、
2000年以降は12%台まで低下し、ここ数年は14%台にとどまっています。

製造業では、新興国などとの激しい価格競争に生き残るため人件費を抑制したのではないか、と思われます。
 
大学の新卒者を見ても
▽パートやアルバイトなど一時的な仕事
▽就職していない-など安定的な雇用に就いていない人の割合は、一時減少傾向でした。

しかし、リーマン・ショック後、再び増加傾向に転じています。
 
一方、卒業後、職に就かなかった期間が長くなるほど、
正社員として採用される割合は低下しています。

就業構造基本調査では、卒業から3年以上5年未満で
男性は4人に1人、女性は2人に1人が非正規での採用でした。
 
新卒で正社員に採用されず、期間を置いて再チャレンジと考えても、難しい状況です。


●男性は5年内に半減

 
初めて就職して非正規雇用だった場合、その後の状況は厳しいものです。

とくに、男性では初就職先での離職割合が高くなっています。

非正規の場合、初めて就職してから4~5年の時点で、
女性の継続率が60・3%だったのに対して、
男性は48・2%。

非正規の男性の半数以上が5年以内に辞めていることになります。
 
厚生労働省の雇用動向調査(2012年)で仕事を辞めた理由を見ると、
男性の場合、19歳以下では「労働条件が悪い」、
20歳代前半は「契約期間の満了」、
20歳代後半は「収入が少ない」、
30歳代前半は「会社の将来が不安」が最も多くなっていました。
 
女性の場合は、20歳代まではいずれも「労働条件が悪い」が最も多く、
30歳代前半は「契約期間の満了」がトップでした。

男女ともに、労働条件への不満が高くなっていました。
 
非正規だった人が離職しても、正社員へ転職できる割合は高くありません。

過去五年間に転職した人のうち、
非正規から正規へ転職できたのは約4分の1にとどまっています。
 

初めての就職が非正規の場合、特に男性は離職率が高くなり、
転職後も非正規の仕事に就くリスクが高まります。
 
若年層が不安定な雇用の悪循環に陥り、経済的な基盤や将来展望も持てなくなると、
結婚などの人生設計に大きな影響を与えます。

長期的には社会全体の活力低下につながりかねず、対策が必要です。




4割が非正規で初就職

マックスブログ 2014年05月15日 http://fanblogs.jp/takamacs/archive/12/0

雇用状況が好転していると聞いています。
大学生なんかの求人も売り手市場とか聞いていましたが、内実は一寸違うようです。

昨日の中日新聞です。(グループでの会合である方が新聞のコピーをくれました。

イメージ 1


記事の内容は2007年~20012年の間で高校や大学を出て、
初めて就いた仕事が非正規だった人の割合が4割に迫っていたということです。

愛知県では人手不足感が全国でも最も強いそうですが、
新規求人に占める正社員の割合は3月で38%と過去最低で
非正規求人に偏っているようです。


原因は、求人数の一番多い自動車産業では景気変動の調整弁として
派遣社員などを活用するため正社員の採用が少ない。

最初に非正規で採用された人は単純作業が多いため、いわれた仕事しかしないといった習慣が自然に身につくため、これを矯正しようとしても中々直らないそうです。

ただ、記事の大きな活字にあるように
若者を正規雇用しないと能力を発揮できないままの人たちが増えてしまい
結局日本の将来が危うくなりそうです。




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40歳。生き残りをかけて・・・!

40歳以上の普通の人が、若者と職を奪い合って勝ち残ろうとする社会は
社会自体が生き残りませんって。

40歳以上の普通の人が、スキルアップして、若者と職を奪い合う社会は、
貧困社会になるしかないって。

突っ込みどころ満載の記事やわな~~~

40歳定年、キャリアを棚卸ししてスキルを武器に! [お金が貯まる人になる連載]
All About http://allabout.co.jp/gm/gc/452968/


40歳定年制で必要な『学び直し』とは?

働く環境が大きく変わりつつある今、ふと気づけば、自分のスキルが“錆びついた刀”になっているケースも――。予測の難しい時代といわれる今、私たちはどんな風に働き、どのようにスキルを伸ばしていけばいいのか…。“生き残る人”になるための方法を、「40歳定年制」を提言している東京大学大学院の柳川範之教授が指南します。

――“学び直すといっても何をどうすれば分からない”と言う人も多いと思います。どんな風に、何を学ぶのが効果的でしょうか?

柳川教授 学び直しというと、まったく新しいことをするという風に捉えられがちですが、必ずしもそれだけはないと思うんですね。大部分の人は今の仕事の延長戦で考えるほうが建設的です。私が考える一番良い方法は、これまでの経験をきちんと整理することです。

――経験を整理するというのは…?

柳川教授 いくら経験を積んでいても、それがきちんと整理されていないと、十分な武器にはなりません。ですから、いったん自分の情報や知識を棚に整理してあげるのです。いわゆる“キャリアの棚卸し”ですね。そうすることで、“こういう時にはこのスキルを使えばいい”ということが分かります。整理すると、スキルとしての輝きようも違ってきます。

それは、その先仕事をしていくなかで非常に大事だし、また、転職を考えた時にも大きな意味を持ちます。転職する時というのは、今までのスキルと能力が通用しなくなるような気がするものです。ですが、それはそう見えるだけにすぎません。スキルを整理しておくと、こういう時にはこういう人に聞けばいい、こんな風にすればいいと、解決の仕方が分かる。どんな場所でも使えるスキルになるわけです。

もうひとつの学び方としては、今の仕事の関連分野を学んでキャリアの幅を広げておくそのために必要なのが時間であり、そして学問です。

――学問とビジネスが、どうつながるのですか?

柳川教授 そもそも学問は、そういったいろんな経験を整理して体系化したものです。かけ離れているように感じるのは、日本の教育制度の欠点ですね。どうしても学生時代の詰め込み式のイメージで考えてしまうから、ビジネスとは全然遠い話にみえますが、実はそんなことはありません。実際、社会人経験を積んだ人が大学の講座などを聞いてみると、“非常にすっきりした”“自分のやってきたことが整理できた”と納得する人が多いです。

――大学やビジネススクールに通うのは、なかなか敷居が高い印象があります。

柳川教授 そこは、私たちも変えていかないといけないと思っています。そして、大学なり教育機関が社会人のスキルアップをケアしていく。会社側もそういったことを従業員に気づかせてあげるような仕掛けを作ることが必要になってくるでしょう。とはいえ、そういったシステムが整うことを待っていては、変化のスピードに間に合わないので,自分から踏みださないといけません。あらためて学びなおす、スキルを整理して自分の能力はどういうものか。欠けている部分は何かを知って強化する。そういう機会が必要です。

教えてくれたのは……
柳川 範之(やながわ のりゆき)さん



<平均所得>地域間格差くっきり 安倍政権下で拡大

毎日新聞)2015/4/17


毎日新聞調査 トップの港区と熊本県球磨村、格差6.5倍


 全国1741市区町村の納税者1人当たりの年間平均所得について格差の度合いを示す「ジニ係数」を年ごとに求めたところ、2013年に係数が上昇し、格差が広がったことが毎日新聞の調べで分かった。安倍政権の経済政策「アベノミクス」による株価上昇で大都市部の一部自治体で住民が所得を伸ばしていることが背景にあり、アベノミクス地域間格差を拡大させていることが数値で裏付けられた。

【平均所得最低はどの市区町村?】人口減、地域再生遠く

 毎日新聞は、総務省が毎年公表する「市町村税課税状況等の調(しらべ)」で、市区町村別の課税対象所得の総額を納税者数で割った額を平均所得と算定。04~13年の10年間でジニ係数を求めた。その結果、構造改革を進めた小泉純一郎政権後半の04~06年に係数は大きく上昇したが、08年秋のリーマン・ショックを経て09年に下降。その後民主党政権下は横ばいだったが、12年末に自民、公明両党が政権を奪還し、安倍晋三首相が政権を運営した13年は7年ぶりに大きく上昇した。この間、アベノミクスによる大規模な金融緩和で13年末の日経平均株価は12年末比で1.6倍に上昇した。

 13年の課税対象所得の内訳をみると、勤労者の給与や自営業者の所得などは前年比0.8%増とほぼ横ばいだった。これに対し、短期の不動産売買による所得は1.4倍、株式譲渡や上場株式の配当による所得は3.1倍に膨張。これらを合わせた13年の資産所得の合計は7兆3953億円で、前年比3兆683億円(70.9%)増となった。

 平均所得が最も高かったのは東京都港区。13年は、12年比40.5%増で1200万円の大台を突破し、7年連続でトップを維持する。一方、平均所得が最も低いのは熊本県球磨村(人口4207人)で193万9000円。12年比2万5000円増で、港区との所得差は4.7倍から6.5倍に拡大した。平均所得トップ10の大半は、ホタテ漁が好調な北海道猿払村などを除き東京都区部が占めた。【小田中大】

◇富の滴り届かず


 神野直彦・東京大名誉教授(財政学)の話 結果を見れば、安倍政権下で地域間格差が拡大していると判断してよい。賃上げや地域経済活性化への地道な努力より、資産所得、特に株の保有や売買が所得の伸びを決め、アベノミクス当然の帰結だ。株式保有者がいる地域がより豊かになり、トリクルダウン(富の滴り)が働いていないことを示している。資産所得への課税強化など手を打たないと格差は拡大する一方だ。

ジニ係数


 所得の不平等感を0~1の間で示す数値。「0」は完全な横並びで、数値が高いほど格差が開き、「1」は1人だけに所得が集中する状態となる。