「安倍首相は軍国主義」「国策として誤り」 と、自民党防衛族たちも安倍アンポ法制に批判の声を上げ始める。


今度は自民党防衛族の元大物議員が安保法制批判!「安倍首相は軍国主義」「国策として誤り」


安倍政権が強引に押し進める安保法制は、衆議院憲法審査会に招致された3人の憲法学者全員が「違憲」と証言したことで、ようやくその危険性が国民にも知れ渡り始めた。
 官邸と自民党は火消しに躍起だが、しかし、批判の動きはどんどん広がっている。今度は“身内”ともいえる自民党の元重鎮から安保法制へのかなり踏み込んだ批判が飛び出し、波紋を呼んでいる。
 その重鎮とは、元自民党副総裁にして防衛庁長官の経験もある山崎拓衆院議員だ。
 山崎は6月6日に放映された『報道特集』(TBS系)にインタビュー出演したが、安保法制の危険性を鋭く指摘。さらには安倍首相の“平和主義”の欺瞞についても真っ向から批判をした。
「安倍政権の言う平和主義とは自衛隊を海外で活動させることで、世界平和に貢献しようという考え方です。しかしこれは国策として誤りです」
 安倍首相の言っていることは「国策として誤り」、つまり日本の利益にならない。山崎はこう断言したのだ。その理由について財政負担と自衛隊のリスク、そして人員確保を上げている。
「(安保法制が成立すれば)自衛隊はさらに大きくしないといけない。財政負担もあるし、自衛隊員の応募から変わってくる。海外に出して死者を出せば、なかなか応募してくれない」
 自衛隊員の死亡にまで踏み込む山崎だが、自衛隊のリスクについて山崎は大きな懸念を抱いているようだ。「報道特集」放映後の8日に発売された「AERA」(朝日新聞出版)6月15日号でもかつての“宿敵”岡田克也民主党代表との対談「国会論戦を阻む『ごった煮法案』」に登場し、自衛隊員のリスクを理由に法案に反対を表明した。
「リスクの面で特に強調したいのは、国際平和支援法の基づく自衛隊の後方支援活動です。後方というのは戦闘の前線と一体で、つまり兵站です。ですから、敵軍は必ず後方も襲う」
 そうなれば自衛隊も防戦し、武力行使、戦闘状態になる。
「そこで死傷者が出ないなんて考えにくい。ですから、リスクが高まることは間違いありません。だから私は、自衛隊を後方支援に出すこと自体に反対です」

国会で安倍首相や中谷元防衛相が、のらりくらりとまともに答えない最大の争点である自衛隊のリスクを、明確に認めたのだ。その上で、今回11本もの法案を一度に出してきた安倍首相の乱暴とも思える手法の背景についてもこう解説している。
「これはおそらくね、この法案を準備した官僚のやり口だと思うんです。法案を一本一本審議したら大変だから、この際、長年抱えてきた課題を一気に片づけようとしている。(略)国会議員は一つひとつの素材を吟味せずにまとめて食べちゃう。この素材に毒が入っている、なんてことは考えない」
 さらにその背景には、外務官僚の対米追従体質と、それを自らの願望である憲法改正に結びつけようとした安倍首相の傲慢さがあると指摘するのだ。
 しかし言っておくが、山崎は決して反戦平和、護憲という考えの持ち主ではない。政治家として長年、憲法9条改正を主張してきたし、また、集団的自衛権行使についても賛成論者だ。さらにかつては国防族のボスとまで言われた人物でもある。だがそんな山崎までが、今回の安保法制は危険すぎるというのだ。逆に言えば、それをやろうとする安倍政権がいかに異常な存在か、ということでもある。
 実際、山崎は自身の過去の経験から「報道特集」でさらに驚くべき発言までしている。
 それは2003年、自身が自民党幹事長時代に深く関わった自衛隊派遣のための「イラク特別措置法」の議論を振り返り、それらに比べ「野党に理解してもらおうとの姿勢がない」と安倍首相を批判した後に発せられた言葉だった。
イラクに行った我が国の方針は結果的に間違いでした。(イラク戦争は)大量兵器を破棄させるのが本来の狙いだったはずですが、それがいくら探してもないんですから。間違った部分があることは間違いない」
 イラクへの自衛隊派遣は間違い。山崎は「報道特集」だけでなく「朝日新聞」(15年4月3日付)でも「大量破壊兵器があると信じたのは間違いでした」と語り、その間違いの背景についても「日本の政治家にたたき込まれた『日米同盟堅持』という外交理念によるものが大きい」と政治家たちの「対米コンプレックス」に言及している。また、安倍首相に対してもこう指摘した。
「首相の『我が軍』発言には、国家のために軍隊は血を流すものだという軍国主義を肯定するニュアンスさえ感じる」
 安倍政権への批判を行ったのは今回名前があがった山崎だけではない。同じく自民党の元重鎮である野中広務や、古賀誠河野洋平などもまた安倍首相の「集団的自衛権容認」「安保法制」に対し、批判や懸念の声を上げている。
 憲法学者に加え自民党OBからも大きな批判が巻き起こるほど杜撰でとんでもないシロモノ。それが安倍首相が前のめりに進める「安保法制」の正体だ。この法案はなんとしても私たち国民の手で廃案にしなければならない。




衆院審査会:「安保法制は憲法違反」参考人全員が批判



衆院憲法審査会は4日、与野党が推薦した憲法学者3人を招いて参考人質疑を行った。この日は立憲主義などをテーマに議論する予定だったが、民主党中川正春文部科学相が、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案について質問したのに対し、全員が「憲法9条違反」と明言した。政府・与党は今国会で、関連法案の必要性を丁寧に説明して国民の理解を得ようとしているが、専門家から批判的な見解が示されたことで、今後の審議への影響を懸念する声も出ている。


安保法制:憲法学者が不信感 シンポに1400人

- 毎日新聞 215/6/6 http://mainichi.jp/select/news/20150607k0000m040079000c.html

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シンポジウム「立憲主義の危機」で発言する佐藤幸治・京大名誉教授(右端)=東京都文京区の東大で2015年6月6日午後8時6分、森田剛史撮影


安全保障関連法案の衆院審議が続く中、京都大名誉教授で憲法学者佐藤幸治氏が6日、東京都内で講演し、「憲法の個別的事柄に修正すべきことがあるのは否定しないが、根幹を変えてしまう発想は英米独にはない。日本ではいつまでぐだぐだ(根幹を揺るがすようなことを)言うのか、腹立たしくなる」と述べ、憲法を巡る現状へのいらだちをあらわにした。法案を巡っては4日の衆院憲法審査会で、自民党推薦の参考人・長谷部恭男氏を含む憲法学者3人全員が憲法9条違反だと批判。自民は当初佐藤氏に参考人を要請したが断られ、長谷部氏を選んでいた。
 佐藤氏は「(憲法という)土台がどう変わるか分からないところで、政治と司法が立派な建物を築くことはできない」とも語り、憲法の解釈変更で安保法制の整備を進める安倍政権への不信感をにじませた。
 講演は「立憲主義の危機」と題するシンポジウムで行われた。続く討論で安保法制について、樋口陽一・東京大名誉教授が「(関連法案の国会への)出され方そのものが(憲法を軽んじる)非立憲の典型だ」と、また石川健治・東京大教授が「憲法9条の論理的限界を超えている」と、憲法学の立場から政府のやり方を厳しく批判した。
 会場の東京・本郷の東京大学構内では、開始前に700人収容の会場から人があふれ、急きょインターネット中継を利用して300人収容の別会場が用意された。だが、そこも満員で立ち見が出る盛況ぶりで、最終的に約1400人が詰めかけた。開始20分前に着き、別会場へ誘導された埼玉県入間市日本語教師の男性(66)は、「安保法制の進め方は民主主義とは違うと感じていた。それが確かめられ、すっきりした」と満足そうに話した。
 主催した「立憲デモクラシーの会」は昨年4月に設立され、樋口、石川両氏のほかノーベル賞を受けた理論物理学者の益川敏英氏など日本の代表的知識人約60人が呼びかけ人に名を連ねている。【林田七恵、太田誠一




山崎拓・元自民幹事長ら4人、安保法案に反対表明

朝日新聞デジタル 2015/6/12  http://www.asahi.com/articles/ASH6D3WFZH6DUTIL02B.html


 自民党で幹事長や閣僚を歴任した山崎拓・元党副総裁(78)を含む元衆院議員ら4人が12日、日本記者クラブで会見を開き、衆院で審議中の安全保障関連法案に、「憲法解釈を一内閣の恣意(しい)によって変更することは認めがたい」などとして反対を表明した。
 出席したのは山崎氏と、自民党時代に政調会長を務めた亀井静香衆院議員(78)=無所属=、元新党さきがけ代表の武村正義氏(80)、元民主党幹事長の藤井裕久氏(82)の計4人。いずれも戦前生まれ。武村氏、藤井氏もかつて自民に所属していた。
 山崎氏は改憲派として知られ、防衛庁長官や党安全保障調査会長などを歴任した防衛族小泉政権下では自衛隊海外派遣に関わった経験を持つ。「不戦国家から軍事力行使国家へとの大転換を意味し、国策を大きく誤る」などとする声明を発表した。
 亀井氏は会見で、「日本が戦争に負けて以来、いま最大の危機にある。我々がじじいだからといって、黙っているわけにはいかない」と述べた。




クローズアップ2015:派遣期間制限「撤廃」 狭まる正社員の道 「雇用調整容易」経済界は歓迎

- 毎日新聞 2015年05月13日 東京朝刊



12日に衆院本会議で審議入りした労働者派遣法改正案は、同じ職場で派遣労働者を使える期間制限(最長3年)を事実上、撤廃するのが柱だ。安倍政権の成長戦略の一環で、企業が派遣労働者を使いやすくなるため、経済界は評価している。しかし、労働者側や野党は「これまで以上に正社員になりにくくなる」などと批判を強め、「3度目の廃案」に追い込みたい考えだ。【堀井恵里子、東海林智、阿部亮介】
 間もなく派遣法改正案が審議入りしようという12日午前。東京都渋谷区の労働組合事務所で、30〜50代の男女6人の派遣労働者は、民主党岡田克也代表に口々に派遣労働の不安定な実態を訴えた。
 「子供の作り方教えてやろうか」。30代と40代の女性は、派遣先の企業で、そんな言葉の被害に遭い、心を病んだ。派遣会社に訴えても解決に動いてくれるどころか、解雇の心配さえある。40代の女性は「解雇すればセクハラはなかったことになる。立場の弱い派遣労働に縛りつけるような改正は許せない」と訴えた。
 改正案には派遣労働者の雇用安定措置も盛り込んだ。だが、15年派遣で働いてきた50代の女性は、自腹で資格まで取ったが、正社員への登用を拒否された、と訴えた。岡田代表は「(改正案が通れば)正社員の道は狭くなる。あらゆる働く人の問題だ」と語った。
 政府は、「柔軟で多様な働き方の実現」を掲げるが、ある連合幹部は「多様な働き方は、安定していてこそ選択肢となる。不安定で流動的な働き方がいくら増えても意味はない」と切り捨てる。
 一方、経済界は改正案を歓迎している。経団連榊原定征(さだゆき)会長は11日の定例記者会見で「国際競争力を確保するためにも、労働法制は国際標準に近い形、イノベーション(技術革新)を促進できるような形、しかも労働者にとってプラスになる形での改善をずっと主張している」と述べ、改正案成立に期待感を示した。
 経済界は日本の労働法制は国際的にみても厳しすぎるとの立場だ。その一つが正社員を簡単にクビにはできない解雇規制だ。派遣なら必要な時に雇い、契約を更新しなければ人員削減できる。2015年の経団連経営労働政策委員会報告でも「有用な労働力需給調整機能を果たしている」と評価しており、期間制限がなくなれば、より使いやすくなる。
 労働者側の主張には、派遣労働者のキャリアアップを図る対策などが盛り込まれたことを踏まえ、「トータルでは労働者にとってプラス」(榊原会長)と反論する。

 ◇揺らぐ「臨時」原則

 今回の労働者派遣法改正案は、「臨時的、一時的」という派遣労働制度の原則が失われかねないと指摘されている。この原則が崩れれば、正社員の仕事を派遣社員に置き換える「常用代替」が進む恐れがある。
 派遣法ができたのは30年前の1985年で、翌86年7月に施行された。当時、派遣は「原則禁止」で、通訳や秘書など13業務だけを例外的に認めていた。例外はその後、26業務まで拡大した。
 最初の転機は99年の法改正だ。当初とは逆に、建設など5業務だけを禁止とし、「原則自由」に転換した。03年には禁止されていた製造業への派遣が認められるなど規制は大幅に緩和された。
 ただ、この時も「派遣労働は臨時的、一時的」との原則は維持された。一つの仕事に派遣社員を使える期間を「最長3年」と期限を切っているのは、そのためだ。08年秋のリーマン・ショック後に「派遣切り」が社会問題化するなど派遣労働は不安定雇用の代名詞。それでも、「臨時の仕事」という位置づけだけは残ってきた。
 改正案が「生涯派遣のままになる」と批判されていることを政府・与党側も意識し、2回廃案になった過去の案を修正。厚生労働相が法律の運用の際に考慮すべき事項に「派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方」を追加した。
 しかし、派遣受け入れ期間が事実上、撤廃され、企業側が派遣社員を長期にわたって使えるようになるのは確かで、労働者側の警戒感は強い。

 ◇人代えれば継続可能

 改正案の最大のポイントは派遣期間制限の見直しだ。現行では通訳や秘書などの専門26業務は無期限、その他の業務は最長3年だが、専門26業務を廃止し、一律に3年とする。
 ただ、期限を迎えた時の対応が大きく異なる。現在は3年を超えて同じ仕事に派遣労働者を使えないが、改正案では労働組合などの意見を聞いた上で、人を代えれば使い続けられるようになる。同じ派遣労働者でも事業所内で働く課を替えれば、更に3年延ばせる。事実上、派遣を使える期間制限はなくなる。
 派遣会社に無期雇用されている派遣労働者は、無期限で派遣先で働ける。
 一方、労働者の雇用安定措置も盛り込まれている。派遣会社に対し、キャリアアップのための教育訓練の実施を義務づけた。また、3年に達した労働者を派遣先に直接雇用するよう依頼したり、新たな雇用先を紹介したりするなどの措置も求めている。しかし、派遣先が依頼を簡単に受け入れることは考えにくいなど実効性は不透明だ。
 また、届け出制と許可制の2種類に分かれている派遣制度を許可制に一本化し、悪質業者の排除を図る。