安倍首相夫人が名誉校長の神道小学校 森友学園「国有地9割引」疑惑 土地取引に次々と浮かぶ疑問点


森友学園「国有地9割引」疑惑 首相夫人が名誉校長の神道小学校の土地取引に次々と浮かぶ疑問点
BuzzFeed Japan 2/16(木) 9:40配信


学校法人「森友学園」が購入した大阪の国有地をめぐり、取引の透明性を疑問視する声が相次いでいる。売買の流れには未だ疑問が残る点がある。いったい何が起きているのか。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】

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2月9日に朝日新聞が報じた「森友学園が大阪の国有地を適正価格の1割で購入していた」。その土地に建つ小学校の名誉校長が安倍晋三首相の妻・昭恵さんだったことなどから、売買の透明性に疑問が投げかけられていた。

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http://xn--nyqy26a13k.jp/archives/24915

財務省はこれまで価格を公開していなかったが、報道を受け、公開に転じた。その中で「埋設物の撤去・処理費用である8億円を控除した」と説明。BuzzFeed Newsの取材に「適正な取引だった」と強調している。

これまでの流れを振り返る。
件の学校法人「森友学園」は2016年6月、大阪府豊中市野田町の国有地約8770平方メートルを購入した。ただ、原則公開とされている国有地の売却金額は、非公表のままだった。

この土地には、森友学園が運営する「日本で初めてで唯一の神道の小学校」である「瑞穂の國記念小學院」が開校する予定だ。


小学校のサイトによると、名誉校長は安倍晋三首相の妻、昭恵さん。校長を務める籠池泰典氏は、政権にも近く、改憲運動を目指す保守団体「日本会議」の大阪支部役員だった。

この取引には、3つの不明瞭な点が指摘されている。

1.なぜ、「9割引き」だったのか
2.なぜ、価格が非公表だったのか
3.なぜ、購入前に基礎工事が始まっていたのか

ひとつずつ、見ていこう。

1. なぜ、「9割引き」だったのか
朝日新聞の2月9日の報道のあと、財務省は価格を公表した。

その説明によれば、土地の価格は報道の通り、周囲の標準的な地価と比べると9割引きの「1億3400万円」だ。安くなった理由は、地下埋設物(廃材及び生活ごみ)の撤去・処理費用である「8億1900万円」を差し引いたためだという。

財務省国有財産審理室の課長補佐によると、土地に埋まっていたのは生活ごみ(ビニール片、陶片、ガラス)や木材片だ。

2010年、土地の元々の所有者である大阪航空局が調査し、表層部分にごみがあることはわかっていた。しかし、2016年3月、森友学園による基礎工事中「さらに大量のごみ」が見つかったという。

なぜ、その処理に「8億1900万円」もかかるのか。この額は、適正なのか。額を決めた大阪航空局補償課の課長補佐は、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。

国交省の『工事積算基準』に伴って計算したものになります。ごみの量をこちらで計算し、基準に照らしました」

ごみの量はどれくらいで、どういう基準で、どういう計算をしたのか。

「くわしい中身になりますと、専門家の担当者に聞かないとわかりません。担当者は月曜日(2月20日)まで出張中ですので、戻り次第確認します」

朝日新聞の14日の報道によると、ごみの撤去にかかった費用について森友学園籠池泰典理事長は「1億円ぐらい」と説明している。また、撤去費用が8億円以上と見積もられていたことは「知らなかった」という。

ただこの点について、学園側が「事実誤認」とし、訂正を求めていることが、2月15日の衆議院財務金融委員会で明らかになっている。

2. なぜ、価格が非公表だったのか
売却額は非公表にされていた。財務省も、豊中市議や朝日新聞の情報開示請求に応じていなかった。

そもそも、財務省が出している通知では、「契約後原則として1ヶ月以内に財務局等のウェブサイトにおいて公表する」とされている。

「行政の透明性及び公正性の確保を図る」目的だ。ではなぜ森友学園の契約は公開されなかったのか。財務省国有財産審理室の課長補佐はBuzzFeed Newsの取材にこう語る。

「契約金額などは、法人が有する企業情報になります。情報公開法5条2項イに該当する『不開示情報』でもあり、公開には同意が必要です。本件については、相手方に『公表しないでほしい』と要請を受けたため、非公表にしています」

その理由は、風評被害だ。

財務省の発表によると、この土地には「地下埋設物」が存在しており、それが「周知されることにより小学校に入学する保護者等への風評リスクが懸念」されるため、森友学園から「契約金額を公表しないよう要請があった」という。

しかし、先ほどの通知を見ても「合意がなければ非公表」とのルールは明文化されていない。過去3年間に非公開になったケースは、「公表には合意が必要」と明記されていた通知下で契約された北海道の1例のみだ。

3. なぜ、土地の購入前に基礎工事が始まっていたのか?
財務省と、大阪航空局の説明を聞くと、疑問点が浮かび上がる。なぜ、森友学園は購入金額が確定する前から、基礎工事を始めていたのだろうか。

航空局補償課の課長補佐はBuzzFeed Newsの取材に言う。

「土地はもともと森友学園に貸し付けていました。通常であれば売り払いとなるのですが、いろいろな事情で貸し付けで対応して、10年以内に購入するという契約を結んでいました」

いろいろな事情とは。なぜ通常と違う対応を?

「詳しくは存じていないのですが、先方の資金的なもので、すぐには買えないという話があったようです」

ここで、国有財産の売買について調査、審議する諮問機関「国有財産近畿地方審議会」の当時の資料をめくってみる。

2015年2月の審議会では、土地を「10年間まず借地として貸して、その後に時価で売る」こと、森友学園が「貸付契約後8年を目途に本地を購入する予定」でいることが明かされている。

この際、委員からは学校側の経営環境について、「10年で私立の小学校の経営環境というのはそれほど改善しない」と指摘されている。

つまり、こういうことだ。
森友学園は資金的な問題があり、9億円相当の土地を、8年後に購入する予定で借りていた。その土地に着工後、大量のごみが出た。そして、価格からはごみ処分代の8億円が控除された。

2月15日の衆議院財務金融委員会では、この問題について議論が紛糾した。

共産党宮本岳志衆院議員が上記の経緯について、「便宜を図ったのでは」と問いただすと、財務省の佐川宣寿・理財局長はこう答えた。

「10年以内であればどのタイミングで買い取るのかは経営判断になる。有償貸付の間に新たにゴミを発見、撤去の必要が生じました」

「開校が1年後に迫っているなか、早期に学校を整備し開校するため、森友学園自らが土地を購入した」

宮本議員は、この購入金額についても指摘した。
それによると、頭金は2700万円あまり。残りの1億円あまりは「10年間分割払い」であり、支払い契約は「毎年1100万円、延納利息1%」となっているという。

つまり、森友学園は通常であれば10億円はする国有地約8770平方メートルに、現段階で国に数千万円しか支払っていないまま、学校を建てようとしている。その名誉校長は、首相夫人だ。

特例ではないのか。この点についての佐川宣寿理財局長の説明はこうだ。

「延納の話でございますが、国有財産特別措置法で分割が認められているもの。一般的に行われていますが、学校法人に対して同じ措置は過去3年間、(全国で)ほかにはない」

麻生太郎大臣は「国有財産地方審議会で十分な審議をいただいたうえで処分されたので、その方針に従って我々としても法令に従って適正な処分が行われた、としか答弁のしようがない」と語った。

これに対し、宮本議員は「これらの話は諮問されていない」と反論。議論はそこで終わった。

BuzzFeed Newsでは、財務省に改めて経緯やその適法性を問い合わせています。



愛国心」と「天皇国日本」が教育理念 9割引で国有地を買った小学校、名誉校長はあの人

校長は日本会議大阪支部の役員。神道を基本理念に掲げ、「天皇国日本」という国家観を醸成しようとしている。

なぜ「森友学園」が格安で土地を購入できたのか。さらにその価格が非公表なのか。詳細は明らかにはなっていない。

 では、この小学校はどんな場所なのか。サイトの「教育理念」には「あえて出る杭となれ!」という標語とともに、こんなことが書かれている。

天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ。伊勢神宮天照大御神外八百万神を通して日本人の原心(神ながらの心)、日本の国柄(神ながらの道)を感じる。
 
愛国心の醸成。国家観を確立。
 
教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成(全教科の要)。道徳心を育て、教養人を育成。

ここには、神道を基本理念に掲げ、「天皇国日本」という国家観を醸成しようとしていることが明確に示されている。 そのほかにも、「日本人の心の中心である伊勢神宮からほど近い松阪の地ですくすく育った杉の木・檜をつかった木造伝統建築の校舎や和風装飾物・校庭木による日本人DNAの呼び覚まし」などと書かれている。  

その下部には、教育勅語も大きく掲載されている。
この小学校で「日本人精神の育成」のために使われるという「教育勅語」は、明治天皇の名のもとに、1890(明治23年)に発せられた「教育ニ関スル勅語」を指す。戦前の教育方針を表したもので、広辞苑によれば、「御真影とともに天皇制教育推進の主柱」とある。

戦後の1948年、国会で排除、失効確認が決議されている。

9割引で買った土地に建つ小学校。その校長となる籠池氏は、海外メディアが注目した「塚本幼稚園」の園長でもある。

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1952年に設立。2006年に拡大移転したこの園は、「愛国心と誇りを育て」ることを目指している。

毎朝教育勅語の朗唱や君が代を斉唱し、これまでロイターやニューズウィークなどが報じていた。



【日本では報道されない】安倍総理夫人が名誉園長の塚本幼稚園が「戦前教育を行う幼稚園」として世界に紹介される!(ロイター・トップニュース)

健康になるためのブログ 公開日: 2016/12/12 
 
大阪にある塚本幼稚園では、園児たちに戦前の「教育勅語」や「五箇条の御誓文」を毎日唱えさせている。園長は、伝統的な日本人としての美徳を子どもたちに学ばせていると話すが、専門家からは国際社会における日本の立場の変化を反映しているとの指摘も聞かれる。

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国有地を激安不正取得、日本会議幹部の経営する「安倍晋三記念小学校」は安倍首相も了承ずみだった! 文春、新潮も追及
@litera_web 2017.02.17

園児に「教育勅語」を暗唱させることで知られる「愛国幼稚園」こと塚本幼稚園幼児教育学園を運営する学校法人森友学園をめぐる国有地“激安”売却問題。

先日、本サイトでは問題の「瑞穂の國記念小學院」の校名が当初「安倍晋三記念小学校」として計画され、実際にその校名で寄附金を募っていたことをお伝えしたが、新たな事実と疑惑が浮上した。

 それは、森友学園の理事長である籠池泰典氏が昨日発売の「週刊文春」(文藝春秋)の取材に応じ、「安倍晋三記念小学校」という校名にすることを安倍首相本人に内諾を得ていた、と答えたのだ。

「(校名を決めたのは)安倍総理が野党議員の時の話です。
内諾はいただいていましたが、総理になってそれは出来ないと辞退されました。安倍総理は政治家というより偉人ですよ」(「週刊文春」より籠池理事長のコメント)

 既報の通り、籠池理事長は憲法改正などで安倍政権と二人三脚の関係にある極右団体・日本会議の大阪支部役員だ。

くわえて瑞穂の國記念小學院の名誉校長には昭恵夫人が就くことになっている。

こうした事実から、国有地が隣接地の約10分の1という破格の値段で森友学園に売却されていた問題も、安倍首相と何らかの関係があるのではないかと見られてきた。

そして今回、安倍首相が小学校設立に自分の名前を冠することを許可していたことを理事長自ら認めたことで、その疑惑はさらに濃厚になった。

(中略)

そして、この怪しすぎる経緯を見れば、安倍首相が自身の名を小学校に冠することをやめて、その関係を隠そうとした理由もここにあるのではないか、と考えるのは自然の流れだろう。

 いや、問題はこれだけではない。
森友学園が運営し、籠池理事長が園長を務める塚本幼稚園は、保護者に向けて「よこしまな考え方を持った在日韓国人支那人」などと書いたヘイト文書を配布、大阪府は〈憎悪表現に当たる恐れがあると問題視〉し、今年1月12日に籠池園長と副園長である妻から事情を聴いていたと昨日、共同通信が報じている。

 こうした同園のヘイト体質は以前から指摘されていたが、そのような理事長と安倍首相は関係をもってきたのだ。実際、昨日発売の「週刊新潮」(新潮社)でも、〈籠池理事長は、安倍総理が来阪すると、定宿の『リーガロイヤルホテル』に駆け付けることもあった〉と書かれている。

しかも、同誌では、籠池理事長の教育者としての資質そのものに疑問を抱かざるを得ない実像も追及。

なんと籠池理事長の次男が取材に応じ、「父は、自分と異なる意見には耳を傾けず、気に入らない人はすぐに切り捨てようとする」と語り、長男の結婚相手を気に入らず玄関先で追い返したことや、孫のことを「幼稚園にぎょうさん子どもはおるから孫は要らん」と言い放ったこと、さらには厳しい教育に抵抗した三男は「両親から白い目で見られ、家にも入れてもらえなくなった」上、7年前に21歳で首つり自殺したと証言。遺書には“両親には頭が上がりません。もう居場所が見つからない”と書かれていたという。しかし、そのときも籠池理事長と妻は神社の研修に行っていたらしく、次男は「警察からの連絡に対応せず、弟は遺体安置所に長時間放置されていた」と話している。

 塚本幼稚園のHPでは〈国家があってこその国民であり、家族であり、個人であります〉と書かれているが、その教育とは一体どんなものなのか。

国有地の売却問題のみならず、ヘイトを撒き散らす学校法人が小学校を設立しようとしている事実、そして安倍首相との関係について、今後も追及していきたい。






あの『日本会議の研究』が出版差し止めに! 過去の判例無視、「表現の自由」を侵す裁判所の不当決定の裏に何が?

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日本を戦前に戻すかのような歴史修正主義憲法改正草の根運動を展開、
安倍政権にも大きな影響を与えている極右組織・日本会議

その存在を広く世に知らしめるきっかけとなったのは、菅野完氏の著書『日本会議の研究』(扶桑社)だった。同書は昨年春の発売直後から各方面で高い評価を受け、こうしたジャンルでは異例ともいえる約15万部のベストセラーとなった。

 ところが、この高い評価を受けている日本会議批判本が、なんと“出版禁止”になってしまった。同書をめぐっては、宗教法人「生長の家」の元幹部である安東巖氏が同書の記述が名誉毀損に当たるとして出版差し止めの仮処分を申し立てていたのだが、6日、東京地裁が安東氏の申し立てを認めるかたちで、出版差し止めの仮処分命令を出したのだ。

 たしかに同書は、日本会議のルーツとして、70年安保当時、右派学生運動を担った元生長の家の信者たちに着目。資料や証言をもとに、彼らがどう右翼運動に関与し、それを日本会議に発展させていったかを詳細に記述していた。

たとえば、現・日本会議事務総長である椛島有三氏や、「安倍首相のブレーン」といわれる伊藤哲夫日本政策研究センター所長なども、同書によって、元生長の家信者だったことが明かされている。

 こうした人物たちは、過去をほじくりかえされるのが、よほど嫌だったのだろう。同書の発売前には、その椛島日本会議事務総長名義で、版元の扶桑社に出版差し止めを要求する文書が送られるという“圧力事件”が起きていた。

 そして、同書が椛島氏や伊藤氏と並んで、元生長の家人脈を束ねる「リーダー格」とし、最終章でその実像に迫ろうとしたのが、今回の差し止め仮処分の申立人(債権者)である安東氏だった。

 そういう意味では、元生長の家幹部である安東氏が申し立てをしたこと自体は不思議ではない。しかし、問題は、裁判所の判断だ。

 裁判で安東氏側は、『日本会議の研究』の記述の6箇所について真実ではないと主張した。裁判所はそのうち5箇所については訴えを退けたが、1箇所については真実ではない蓋然性があるとして、関述之裁判長は「販売を継続することで男性は回復困難な損害を被る。問題の部分を削除しない限り販売してはならない」としたのだ。


 はっきり言って、ありえない決定だろう。たかが一箇所、真実性が証明できない記述があるだけで、出版物の販売を差し止めるとするのは、憲法で保障された表現・報道の自由および読者の「知る権利」を著しく損ねるもので、あきらかに行き過ぎである。

 過去の事例を見ると、たとえば2007年には、田中真紀子(当時・衆議院議員)の長女が、自身の離婚について報じた「週刊文春」(文藝春秋)の記事がプライバシー権を侵害するとして申し立て、地裁が同誌出版前に差し止めの仮処分決定を出したことがあった。

この決定には、日本雑誌協会出版労連日本ペンクラブが抗議声明を出すとともに、言論界からリベラル派、保守派を問わず大きな批判の声があがり、文藝春秋が抗告した高裁は「記事はプライバシー侵害だが、事前差し止めを認めなければならないほど重大な損害を与える恐れがあるとは言えない」として決定を取り消している。

 最近では、百田尚樹氏の『殉愛』の記述をめぐって故・やしきたかじんの娘が起こした名誉毀損裁判も記憶に新しい。この裁判では、長女が発行元の幻冬舎に出版差し止めを求めたが、東京地裁は4件でプライバシー侵害と名誉毀損を認めたものの、差し止めに関しては「頒布することで原告が被る不利益は大きいが、事後に回復するのが著しく困難と認められない」として棄却している。つまり、百田氏による記述のデタラメさこそ認定したが、それでも出版差し止めという表現の自由の剥奪には至らぬと配慮したのだ。

 出版物の差し止めが、このように通常よりかなりハードルが高く設定されているのは、もちろん、その濫用が近代民主主義の根幹である表現の自由を侵す可能性があるからだ。損害賠償や訂正・おわびの掲載などと違って、出版物の頒布・販売を禁止するというのは、下手をしたら国家による「検閲行為」につながりかねない。

 そういう意味では、今回の『日本会議の研究』についてただ一箇所の記述のみで差し止めを決定したことのほうがむしろ、異常事態なのだ。

 事実、同書には、これまでの裁判所の基準で出版差し止めにあたるような要素はまったくない。出版差し止めの判例としては1986年の「北方ジャーナル事件」が知られ、「もっぱら公益を図る目的でないことが明白であること」と「被害者が重大にして著しく回復困難な被害を被るおそれがあること」が、その後の差し止め判決でも大きな基準とされてきた。

日本会議の研究』のケースでは、第一に、安倍首相をはじめとする現役政治家の多くが日本会議の議連に参加し、関連集会などに出席していることから、同書の公益性は自明である。

また、日本会議の源流を探るうえで、個々人の政治活動家について言及することもまた、公益を図るものとして当然、認められるべきものだ。

 差し止めの対象となった記述も、「え、これで?」というようなものだ。

東京地裁が問題にしたのは、同書が1970年代、生長の家青年会の機関紙の部数を拡大する「『理想世界』100万部運動」によって、青年会学生らが消費者金融に手を出してまで購入することを余儀なくされ、「結果、自殺者も出たという。しかし、そんなことは安東には馬耳東風であった」(同書より)と記述した部分。これが、安東氏は冷酷に運動を続けたという意味に解釈でき、それによって社会的評価が低下し、重大かつ著しく回復困難な損害を被ると判断したというのだ。

 こんなレベルの記述で、出版差し止めが濫発されるなら、週刊誌や夕刊紙はすべて出版再し止めになってしまうだろう。もちろん、政治家のスキャンダル報道などまったくできなくなり、あたりさわりのない「取材」を許可され、言い分を垂れ流してくれる“御用ジャーナリスト”以外は筆を折らねばならなくなる。いや、それどころではない。こんな裁判官はおかしい、言論弾圧に加担している、独裁政権を走狗と化している、なんていう表現までできなくなり、公権力に対する一切の批判が封殺されてしまう可能性さえある。その状況で一番の不利益を被るのは誰か。いうまでもなく、情報を受け取れなくなるこの国のすべての生活者だ。

 今回、東京地裁の関述之裁判長らはなぜこんなトンデモな決定を出してしまったのか。
 関裁判長は2014年、グーグルで自分の名前の検索結果が表示されるのがプライバシー侵害だとして検索結果の削除を求めた仮処分申し立てで、検索結果の一部削除を命じたことがあり、「表現の自由」に対する意識が低かったというのはあるかもしれない。

 しかし、もうひとつ気になるのが、差し止めになったのが日本会議をテーマにした本であるという事実だ。いうまでもなく、日本会議は安倍政権を熱烈に支持し、安倍首相の悲願である憲法改正などで二人三脚の関係にある。

実際、15年秋には、日本会議が実質的に取り仕切る改憲団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の武道館集会に、閣僚を含む大勢の政治家が出席。

安倍首相もビデオメッセージで「憲法改正に向けて渡っていく橋は整備された」と意気込みを語り、会場から大喝采を受けていた。

 そういう意味では、今回の差し止め決定は、安倍政権が批判的なメディアに対して陰に陽に強い圧力をかけているここ数年の状況と重なるものがある。

もしかすると、司法もまた、安倍政権のメディアへの強行姿勢を忖度し、これまで自制的だった出版差し止めにまで踏み込んできたのではないか。そういう懸念が頭をもたげてくる。


 いずれにしても、今回の判決が司法の暴挙、言論弾圧であることは明白だ。前述した「文春」の田中真紀子長女記事出版差し止め事件の際には、リベラルなジャーナリストや言論人はもちろん、あの櫻井よしこ氏など、右派からも激しい司法批判が飛び出した。


 本来なら、今回の件でも、言論の自由と読者の知る権利を守るために、徹底的に裁判所の決定を批判する大キャンペーンが展開されるべきだが、はたしていまのマスコミ、言論人にそんな意識や気概が残っているのだろうか。


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